借り上げ社宅で節税する方法【福利厚生の充実と損金参入で節税】

社宅を設けて従業員に提供している会社は少なくありません。

社宅は家賃が安い分従業員にとって嬉しい制度ですが、会社にとっても節税の面でメリットがあります。
家賃が会社の経費となるのかなど、社宅制度を運用する場合の節税方法についてまとめました。

福利厚生の代表格、社宅制度

社宅は会社が従業員のために用意する住宅のことで、その家賃相場は通常の約2割から5割程度といわれています。

家計の中で高い割合を占める居住費を抑えられるため、従業員にとっては大変メリットが大きく、社宅制度は福利厚生の中でも代表的な存在として知られています。

社宅の主な種類には社有地に設ける「社有社宅」と、賃貸マンションやアパートなどを会社が契約する「借り上げ社宅」があります。

ここではそれぞれの特徴を節税面でのメリットも含めて説明しましょう。

賃料がかからない社有社宅

社有社宅は物件を自社で保有するため敷金や礼金、毎月の賃料などがかかりません。

不動産を資産にできることや従業員以外にも貸し出せること、空室さえあれば急な入居者にも対応しやすいことなどもメリットとして挙げられます。

ただし土地や建物を確保するための初期費用やその後にかかる維持管理費用、修繕費用などは自社で賄う必要があります。
老朽化に伴う大規模修繕などではかなりの費用がかかりますが、将来的に稼働率を維持できるかの判断も欠かせません。

資産価値に応じた固定資産税もかかってくるため、社有社宅の場合コストダウンや節税面でのメリットはそれほど大きくありません。

節税に最適、借り上げ社宅

借り上げ社宅では会社が契約した賃貸物件を従業員に又貸しする形をとります。

この場合賃料すなわち家賃のうち一部を会社が負担することになりますが、これは従業員へ支払う給与ではないため福利厚生費として経費計上できます。

つまり負担分は法人税の課税対象とならず、会社が支払う社会保険料にも影響しません。

従業員に対する家賃補助の方法として住宅手当を支給する形もありますが、住宅手当は給与に加算して支給する形となるため社会保険料の負担が上がり、従業員の社会保険料や所得税、住民税なども高くなってしまいます。

借り上げ社宅ならば会社と従業員双方の負担を抑えられるので、節税の面で大きいメリットがあります。

また条件に応じて借り換えができるなど、柔軟な対応ができるのも借り上げ住宅ならではのメリットですし、もちろん修繕費などの費用もかかりませんので、負担も少ないです。

借り上げ社宅制度での節税、その注意点

これらの特徴から、新たに社宅制度を導入する場合には借り上げ社宅を契約して運用するほうが節税やコストダウンを考えたときに有利なケースが多くなります。

かつてのバブル期には不動産投資が活発に行われていたため社有社宅を運用する会社が多くありましたが、近年は借り上げ社宅にシフトしています。
借り上げ社宅を運用する際の注意点をいくつか挙げましょう。

従業員から一定額を受け取る必要あり

社宅の家賃相場は2割から5割程度であると書きましたがこれはあくまで一般的な相場で、実際の額をこの範囲に抑える決まりはありません。

負担割合は社内規定で自由に決められるので、賃料の0%でも100%でもかまわないわけです。
ただし先述の福利厚生費として経費計上を行うには、賃貸料相当額以上を毎月従業員から受け取っておく必要があります。
賃貸料相当額とは、次の3項目の合計額です。

  • (その年度の建物の固定資産税の課税標準額) × 0.2%
  • 12円 × (その建物の総床面積(平方メートル) ÷ 3.3(平方メートル))
  • (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額) × 0.22%

建物の場所や状態によっても変わってきますが賃貸料相当額は実際の賃料よりも安くなるケースがほとんどで、従業員の負担を10%近くにまで抑えられることもあります。

賃料が10万円の物件に1万円で住めるとしたら、それは従業員にとってかなり魅力的な福利厚生といえるでしょう。
負担割合を単純に賃料の50%としている会社も少なくありませんが、課税標準額を基準に賃料相当額を計算するほうが節税になります。

デメリットについても説明を

従業員が負担する社宅の家賃は基本給からの天引きとなるため、額面だけ見ると給料を安く感じる場合があります。
また社会保険料の負担が少なくなる分、将来受け取れる年金の受給額が少なくなる点もデメリットとして軽視できません。

社宅制度についてはメリットだけでなくデメリットも余すところなく説明を行い、理解を得たうえで利用を促すのが双方にとってプラスとなるでしょう。

賃貸契約の途中解約に注意

長期契約の借り上げ社宅では、途中解約を行うと違約金が発生するケースがあります。
様々な事情によって入居者が途中で退去する可能性はゼロではないため、途中解約の可能性については考えておく必要があります。

また管理会社や物件によっては法人契約が行えないこともあるため、契約時にはその内容を詳細までよく確認しておきましょう。

借り上げ社宅まとめ

会社が住宅を用意して従業員へ提供する社宅は、従業員への福利厚生の一環として用いられる制度です。

物件そのものを会社が保有する「社有社宅」と、会社が賃貸契約を結んで従業員に又貸しする「借り上げ社宅」の2種類がありますが、節税面でメリットが大きいのは「借り上げ社宅」です。

会社の家賃負担分を福利厚生費として経費計上するためには賃貸料相当額以上を受け取る必要があるので、課税標準額を確認して計算しておきましょう。

賃貸契約の内容は事前によく確認し従業員にはデメリットも含めて説明を行っておくことで、しっかりと節税を行いながら社宅を運用することができます。

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