性感染症の中でも知名度が高く、我々全員が知っておかなければいけない病気の一つがHIVです。
一般的には「HIV=エイズ」と考える人もいますが、実はHIVとエイズの意味は異なります。
エイズとHIVにはどんな違いがあるのか、ここでは基本的な感染経路や感染率も含めてHIVの基礎知識についてまとめていきます。
そもそもHIVとは何か?
HIVというのはHuman Immunodeficiency Virusの頭文字をとって略称としたものです。
日本語にすると【ヒト免疫不全ウイルス】となります。
HIVに感染すると、免疫機能が弱ってしまうのが特徴です。
ヒトが健康に暮らしていけるのは、私たち人間の持っているこの免疫機能の働きによる部分が少なくありません。
端的にお伝えすると、身体の外から入ってきた有害な病原菌などを殺して無効化してしまうのが免疫機能の働きです。
つまり私たちの命を守ってくれる働きですね。
ところが何らかの影響を受けて免疫機能が弱まると、身体が様々な不調を起こすようになります。
HIVによる免疫機能の低下とは?
HIVに感染すると免疫機能が低下します。
なぜ免疫機能が低下するのかを考えていきましょう。
先述のように免疫機能とは体内に侵入してきた、病原菌などを駆逐する役割のことです。
この役割の要となるのが白血球という細胞なのです。
白血球にもいくつか種類があるのですが、中でも重要なのがCD4陽性リンパ球細胞になります。
このCD4陽性リンパ球細胞が、白血球に対して命令を出す役割を担っているためです。
HIVはこのCD4陽性リンパ球細胞に侵入し、増殖を繰り返して最終的には破壊する仕組みを持っています。
つまり白血球に指示を出す細胞が、どんどん壊されていくので免疫機能が正しく働かなくなるのです。
エイズとHIVの具体的な違いについて
ではエイズとHIVの違いを確認します。
HIVに感染すると免疫機能が低下していきます。
何の治療もせずに放置すると、少しずつ機能が低下していき、最終的には合併症を発症してしまうのです。
一般的には5年から10年程度とされています。
この合併症のことをエイズと呼ぶのです。
正式にはAIDSと表記をしますが、これはAcquired Immunodeficiency Syndromeの略称となります。
日本語にすると【後天性免疫不全症候群】です。
つまりHIVに感染することで発症する合併症がエイズなのです。
ちなみに合併症については厚生労働省が定めている、23にものぼる種類があります。
この23の内、いずれかを発症するとエイズと診断されるのです。
代表的なものを幾つか紹介しておきます。
- 性器以外の部分のカンジダ症
- 化膿性細菌感染症
- 活動性結核
- カボシ肉腫
- 原発性脳リンパ腫
- HIV脳症
HIVの感染経路は性的接触が圧倒的
HIVは性感染症として有名な疾患だけに、一般には性交渉による感染症と認知されているようです。
しかし実際には他にも感染する経路があります。
大きく分けると次の3つです。
- 性的感染
- 血液感染
- 母子感染
HIVに感染すると母乳や血液、精液や膣分泌液の中にHIVウイルスが多く含まれることになります。
同じ体液でも唾液や涙、尿などには他者に感染するだけの量が含まれていません。
そのためこの4つの体液が、他人の身体に入ると感染するのです。
血液感染とは
血液感染とは輸血や、注射器などを再利用することで起こる感染経路です。
輸血については現在の日本では、かなり厳格にHIV検査を行っているので、ほぼ感染の心配はありません。
また注射器の再利用についても、現在は各医療機関で適切な取扱をするようにしています。
そのため血液感染で最も多いのは、針刺し事故です。
医療機関などで注射器を廃棄するのに、誤って針が刺さってしまうケースを指します。
この点でも安全に配慮した取扱を行っていますし、万が一に起こったとしても2時間以内に抗HIV薬を摂取することで感染のリスクを低減可能です。
また覚醒剤などの麻薬を注射器の使いまわしや殺菌せずに使用すると、同様に感染リスクが高まります。
母子感染について
母子感染は母親がHIVに感染している時に起こります。
主には以下のパターンがあります。
- 出産時に起きる産道感染
- 母乳による感染
- 胎内感染
この母子感染も防止するために、妊娠初期にはHIV検査を行い、場合によっては妊娠中のHIV治療や帝王切開などが行われます。
現在では医療技術が確立したことで、母子感染のリスクは0.5%未満にまで低下しているのです。
性的感染(セックスによる感染)
HIVで最も多い感染経路が性的感染です。
主なパターンとしては、HIVウイルスに感染した人の性的分泌物(精液・膣液)が体内(性器や肛門、口などの粘膜組織や傷口)から侵入することで感染します。
しかし、キスやフェラチオ、クンニリングスからの感染確立は濃度的なこともありますのでそう高くなく、そのほとんどはコンドームを装着しない生でのセックスや生でのアナルセックスになります。
よって、単純にコンドームを付けてセックスをしていれば、HIVに感染することは稀であると言えます。世界中でエイズ撲滅のために「コンドームを装着してセックスする」呼び掛けはこういう理論から来ています。
HIVに感染しても正しい早期治療によって寿命を全うできる
最後にHIVの治療についても紹介しておきます。
エイズという疾患名が世間に知れ渡った時には、不治の病などのようなイメージがありました。
ですが最近では医療技術が進んだことによって、HIVの増殖を抑制できる薬が開発されています。
この薬を常用することで、合併症を起こすまで症状を進行するのを防ぐことができるのです。
根治することは現時点では難しいですが、決して不治の病ではありません。
HIV感染症についてのまとめ
HIVとはヒト免疫不全ウイルスの略称で、感染すると免疫機能が低下していくのが特徴です。
治療をせずに放置していると、5年から10年程度で免疫不全による合併症を発症してしまいます。
この合併症のことをエイズと呼んでいるのです。
感染経路として以下の項目を知っておきましょう。
- 性的感染
- 母子感染
- 血液感染
以前は確かに治療が難しい病気ではありましたが、現在ではHIVを抑制する薬が開発されていますので、早めの治療をすることにより、一般的な社会生活を送って寿命を全うできる時代に私たちはいます。