国内出張旅費規程の作成方法と日当・宿泊費の相場【テンプレート付】

国内出張旅費規定の作り方とテンプレート 経営・税金・法律

出張旅費規程を作成することで、近距離の国内出張でも出張費として経費(損金)計上できるようになります。

節税にも非常に効果的であるため、会社経営者の方であれば確実に作成するようにしましょう。

国内出張旅費規程について
  • 出張旅費規程の作り方
  • 出張旅費規程作成時の注意点
  • どれくらい節税できるのか
  • 国内出張旅費規定の見本(雛形テンプレート)

国内の出張旅費規程に関して上記の内容を解説していきます。

出張旅費規程はどうやって作るのか?

出張旅費規程を作る際、税理士に依頼しなければならないと思っておられる方も多いようです。

しかし、実際に専門家に依頼するのであれば、税理士ではなく社会保険労務士の仕事となります。
とはいえ、社会保険労務士でなければいけないという法律はないため、出張旅費規程を自社で作成することも可能です。

ネット上では多くのテンプレートも手に入りますし、日当や宿泊料の相場も調べられますので、実は簡単に出張旅費規程を作ることが可能になっています。

私の会社も世間の相場や国家公務員の規定を参考にして、自分で作成しました。
一般的には、以下の順番で出張旅費規程(国内版)を作っていきます。

  1. 必要事項を記入
  2. 附則に日付を記入
  3. 臨時株主総会での決議
  4. 運用

簡単に説明すると上記のような手順で出張旅費規程を作成していきます。

必要事項を記入する

出張旅費規程に記入すべき条項
  • 第一条:出張旅費規程に関する目的
  • 第二条:出張の適用範囲(代表、役員~従業員、等)
  • 第三条:出張の経路の定義
  • 第四条:日帰り出張、宿泊出張の定義
  • 第五条:交通費、宿泊費、日当の記載
  • 第六条:同伴者に伴う旅費の取り扱い、
  • 第七条:時間外勤務についての記載
  • 第八条:出張報告書や出張旅費明細書を作成する旨
  • 第九条:出張期間中の休日の取り扱い方
  • 第十条:規定にないものは都度協議
  • 附則

最低でも、出張旅費規程には上記のような項目を記載する必要があります。
(※会社によって、さらに必要なものがあれば独自に追加してください)

会社の規模が大きくなれば、さらに細かい規定を加える必要性も出てくるかと思いますので、ご自分の会社の規模に合わせて最適なルールを決めてください。

ちなみに私の会社のような「中小零細企業」の場合はこの程度で OK だと思います。

出張の定義を定める

出張の定義を会社として定める必要があります。

例えば、日帰り出張の定義は、「片道100km以内、宿泊の必要がない出張」と定義できます。
宿泊出張に関しては、「片道100km以上で、宿泊の必要が生じる出張」であると定義することもできるでしょう。
これは、今後共通の定義となるため、慎重に距離を決める必要があります。

各地の交通事情にもよりますが、50km程度ですと、余裕で日帰りできますし、出張というほどでもなく、単なる遠出の営業レベルとも取れますので、私の会社では100kmを基準にしています。

100kmですと東京~宇都宮くらいですが、これくらいの距離がないと負担にはなりませんので「日当を支給されるほどのものではない」と私は思っております。

交通費、宿泊費、日当の記載と相場

交通費や宿泊費、日当は、それぞれ役職区分や移動距離、また宿泊の有無に基づいて決定することができます。
例えば、宿泊出張の場合、以下のように「日当」を定めることもできます。あくまでも相場ですので、各社違いがあります。

宿泊出張の日当の相場
  • 代表取締役:5,000円~7,000円
  • 役員:3,000円~5,000円
  • 管理職:2,000円~4,000円
  • 一般社員:1,000円~3,000円

日帰り出張であれば、以下のように規定することもできます。

日帰り出張の日当の相場
  • 代表取締役:4,000円
  • 役員:3,000円
  • 管理職:2,000円
  • 一般社員:1,000円

この数字はあくまで参考なので、各社で規定するようにしてください。

日当が多ければもらえる個人としては喜ぶでしょうが、同時に会社の経費の負担が増すことにもなります。この辺のバランスを良く考えて、日当の金額を決める必要があります。

交通費の場合は、新幹線・飛行機ともに、正規の普通運賃を定額支給するのがよろしいでしょう。

国内便に関しては正規運賃と各種割引価格の差はそれほどありませんし、急な出張の場合はほぼ正規運賃での購入となりますので、最初から正規運賃の定額支給を規定するのが望ましいと言えます。

これは旅費精算の際にも、大いに簡略化が期待できますので、スムーズな経理処理にも繋がります。
宿泊費に関しては、以下が相場となります。

宿泊費の相場
  • 代表取締役:12,000円~15,000円
  • 役員:10,000円~13,000円
  • 管理職:9,000円~12,000円
  • 一般社員:8,000円~10000円

宿泊費も定額支給をおすすめしています。端数の出る実費精算は出張後の精算にも負担が生じますので、「一律いくら」の方がかなりスムーズに経理処理が可能となります。

附則に日付を記入

すべての条項を記載した後、出張旅費規程の最下部に、附則の日時を記載して完成します。
基本的には、出張旅費規程を作成した日を記載しておけば良いです。

臨時株主総会での決議

出張旅費規程が完成したら、すぐに利用できるわけではなく、株主総会議事録か合同会社の場合には総社員同意書を作成する必要があります。

これは中小企業などにおいて、社長の独断で出張旅費規程が作られたわけではないことを証明するためです。
このステップをしっかり行なっていないと、税務調査によって出張費が経費として認められず追徴課税の対象になることもありますので、注意が必要です。

運用

株主総会議事録に記載されれば、実際に出張旅費規程を運用できるようになります。

定額支給と実費支給

上の項目で、「交通費と宿泊費は定額支給をおすすめする」と書きました。

これはどういうことかというと、出張旅費の精算には二つの方法があります。

  1. 実費支給(実費精算)
  2. 定額支給

実費支給とは、航空券や新幹線のチケットを会社で手配したり、出張者が自費で支払った分を、後で領収書と引き換えに実費精算する方法です。(いわば普通のよくあるやり方です)

バスや電車等の細かい分は当然実費での精算となるのが普通ですが、予め大きな金額のものを定額支給と定めておくことにより、出張旅費精算時の大きな部分をスムーズに処理することができます。

定額支給にすべき項目
  • 日当: 日当は予め定めた金額を一律に支給しますので、自動的に定額支給となります。
  • 交通費: 飛行機と新幹線に関しては、正規運賃の定額を支給すると規定することができます。これにより、地域別の金額が固定されますので、とても便利です。
    私の会社では、予め地域別の価格表(航空券・新幹線)を作ってありますので、その表に従ってすぐに金額が出せるようにしています。
  • 宿泊費: 世間の相場(社会通念上、まともな金額)を規定することにより、定額支給ができます。

定額支給のメリットとデメリット

定額支給を規定した場合の、会社側と個人にとって、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのか確認しておきましょう。

会社にとってのメリットとデメリット

  1. メリット
    金額が固定しますので、大幅な経理処理の簡略化につながります。
    会社がホテル・新幹線・飛行機の予約をする必要がなくなるので、手間が省けます。
  2. デメリット
    経理が楽になるだけで、デメリットはありません。

出張者にとってのメリットとデメリット

  1. メリット
    宿泊費において、定額よりも安いホテルに泊まった場合、差額分が出張者の手取り収入となります。
    この分に関しては税金も社会保険料もかかりませんので、出張者にとっては非課税の臨時収入となり、出張に対してのモチベーションもアップします。
    例えば、10000円の定額支給のところ、5000円のホテルで我慢した場合、毎回5000円が浮くことになります。月に2回このようにした場合、出張者は年間で12万円得することになります。
    これが長期出張になったり、回数が多ければさらに非課税の収入が増えることになります。
    会社にとっても社会通念上で適正な金額を定額支給しているので、特に問題はありません。
  2. デメリット
    もし安いホテルの予約ができず、高いホテルに泊まることになった場合、出張者が自分で差額を負担することになります。
    また、ホテル・飛行機・新幹線のチケットを、出張スケジュールに合わせて、自分で手配する必要があります。

以上を踏まえて、実費支給と定額支給を各社で決めるようにしてください。
会社目線から言えば、宿泊費と交通費は定額支給がベストと言えます。

定額支給の際のルール

定額支給にする場合は、必ず出張者個人が自分で手配し、代金を立て替える必要があります。

出張後に、「出張旅費精算書」を作成し、精算完了となります。

定額支給の場合の金額は、社会通念上からみて妥当な金額に設定する必要があります。
航空券と新幹線のチケットは、正規運賃を定額とするのが一般的です。

出張旅費規程作成時の注意点

出張旅費規程を作成すると、経費として正式に認められるようになるため、出張に出かける社員や代表が領収書をもらう必要がないと感じるかもしれません。
確かに、出張旅費規程があれば経費として計上することは可能です。

しかし、税務調査が入った場合、出張に関係する領収書がない場合は、脱税ではないかというあらぬ疑いを持たれる可能性が出てきます。
ですから、領収書や出張に行ったという証拠となる資料はしっかりと社内に保管しておくことが大切です。

また、法人口座から出張の際の宿泊費などを支払ってしまうと、出張旅費規程に記載されている宿泊費や交通費の定額支給ができなくなります。(実費精算になってしまう)

ですから、定額支給の項目については、まずは社員が支払を個人として行い、出張後に会社が出張旅費規程に従って支給を行わなければなりません。この時点で経担当者が確実に領収証等をチェックし、社内で出張の正当性を証明するのがベストです。

上記の点は、出張旅費規程に関してよく間違われることなので注意してください。

どれくらい節税できるのか

出張旅費規程によって日当が規定されていれば、出張に必要な経費を日当として支給できるようになります。
また、宿泊費や交通費に関しては、出張旅費規程で決められた金額以下であっても、規定通りの金額を支給できます。

こうした金額は、規定内であれば全額損金となり、経費に計上することができます。

受け取る支給額には税金がかかってこないため、会社は支給金額を社員に非課税で支給することができます。
支給額には、社会保険もかかってこないため、社員にとっても大きなメリットになります。

出張の回数が増えれば、会社は出張旅費を損金計上することによって利益額を減らすことができるため、法人税を安くすることが可能になります。

出張旅費規程は、税務に関する作業を大幅に減らすことができるだけでなく、会社の利益額を減らせるので節税としても効果的です。

会社にとっては法人税の支払を少なくすることになり、社員にとっては税金のかからない収入ができることになります。
両者にとって、共にメリットがある良い節税対策と言えるでしょう。

国内出張旅費規程のひな型(見本テンプレート)

下記に国内出張旅費規程の見本(テンプレート)を金額の相場を入れた形で載せますので、ご自分の会社の規模等に合わせて書き換えてご使用下さい。
最低でもこれくらいの項目は必要かと思います。

国家公務員等のお役所レベルになると、相当細かく規定されていますが、普通の会社でしたら大企業でないかぎり、これくらいで良いのではないかと思います。念のために担当の税理士さんに確認してもらうとより安心です。

以下、国内出張旅費規程の見本ですので、参考にして下さい。


国内出張旅費規程

(目的)
第1条
この規程は、●●▲▲会社の役員および社員が社命により日本国内に出張する際の旅費について定める。

(適用範囲)
第2条
本規程は、原則として役員および社員に適用する。但し社員および従業員以外の者であっても代表者の承認を得ている場合は、本規定を準用することができる。

(出張の経路)
第3条
本規定の出張の経路は、予約上可能な限り、最も合理的かつ経済的な順路、および方法によって計算する。但し、業務の都合、天災など特別な事由がある場合はこの限りではない。

(出張の定義)
第4条
出張旅費は、出張の目的、距離により次の通りとする。

1 日帰り出張: 原則として勤務地より片道100km以上の地へ出張し、当日中に帰着する出張をいう。
2 宿泊出張:  原則として勤務地より片道100km以上の地へ出張し、宿泊を必要とする出張をいう。

(旅費)
第5条
この規程によって支給される旅費とは、次のものをいう。

・交通費
・宿泊費
・日当

1 交通費は、下記表で定める額を支給する。

区分新幹線・特急飛行機その他
A 代表取締役グリーン車運賃の定額ファーストクラス普通運賃の定額(※)実費
B 役員グリーン車運賃の定額エコノミークラス普通運賃の定額実費
C 社員指定席運賃の定額エコノミークラス普通運賃の定額実費

※予約の都合上、エコノミークラスの搭乗となった場合は、エコノミークラス普通運賃の定額。

2 宿泊費は、宿泊日数分、下記表で定める額を支給する。

区分宿泊費
A 代表取締役15,000円
B 役員13,000円
C 社員10,000円

3 日当は、出張日数分、下記表で定める額を支給する。

区分日当
日帰り出張宿泊出張
A 代表取締役3,000円5,000円
B 役員2,500円4,000円
C 社員2,000円3,000円

※宿泊出張において、帰着が午前中の場合には帰着日の日当は支給しない。帰着が午後の場合には帰着日の日当を支給する。

(同伴者に伴う旅費)
第6条
上位職位者または取引先と同行して出張する場合は、上位職位者または取引先と同等の取扱いをすることができる。

(時間外勤務)
第7条
出張者については時間外勤務の取り扱いは行わない。

(出張報告)
第8条
出張者は、出張旅費精算書を作成し、これを提出しなければならない。

(出張期間中における休日の取扱)
第9条
出張期間中に休日がある場合は下記表のとおり扱う。

業務活動の有無支給の有無
業務活動を行なった場合日当、宿泊費等、通常のとおり支給する
業務活動を行なわなかった場合宿泊費のみを支給し、日当は支給しない
出発日、移動日、帰着日が休日の場合日当、宿泊費等、通常のとおり支給する。ただし第5条3項の通り、帰着が午前中の場合には帰着日の日当は支給しない

(その他)
第10条
本規程で処理できない場合は、その都度協議にて処理する。

付 則

この規則は、令和1年3月1日より適用する

国内出張旅費規程の見直しをした場合

「この規程の一部を改訂し、令和2年1月15日より適用する。」
↑ この一文を附則に付け加える。

付け加えた場合は、以前の適用日時を消すのではなく、新しい日時を追加していくことになります。
以下、附則の見本です。


附 則

この規程は、令和1年3月1日より適用する。

この規程の一部を改訂し、令和2年1月15日より適用する。


▲内容や金額の見直しは、随時しても問題はありませんが、その際株主総会での承認が必要となりますので、議事録の作成と保管をしてください。

合同会社の場合は、株主総会が存在しないため、【同意書】を作成して保管することになります。

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