弁護士資格は実際に剥奪される事はあるのか?弁護士の懲戒処分・除名について

弁護士の懲戒処分・除名 経営・税金・法律

国家資格である弁護士免許を取得すると、永遠に弁護士でいられると思っている方も少なくありません。
確かに弁護士の資格は、国家資格の中でも特に重視されている資格です。

しかし弁護士とはいえ、本人の行動次第では資格が剥奪されることもあります。
弁護士資格をはく奪される状況について整理してみましょう。

懲戒を与えるのはどこの組織か?

弁護士の理念は、どんな権力からも離れ独立している事です。
そのため弁護士が1人であっても法律によって、国という大きな組織とも戦うことができるようになります。

仮に国が弁護士の処分を決められると、訴訟相手となるかもしれない国に弁護士の資格が左右されてしまい、権力という力と戦うことができません。
そのため弁護士に対して懲戒を与えるのは国ではなく弁護士会です。

では、弁護士会が与える懲戒には、どのような種類があるのでしょうか?

弁護士が受ける可能性のある懲戒の種類

弁護士会が個々の弁護士に対して与える懲戒については、弁護士法57条1項によって定められています。
懲戒処分を軽い順から並べていくと、以下のようになります。

  1. 弁護士に反省を求めるために行う戒告
  2. 弁護士業務を2年間停止させる業務停止
  3. 弁護士の資格は失わないものの弁護士活動ができなくなる退会命令
  4. 3年間弁護士資格を失い、弁護士活動もできなくなる除名

上記のような種類がありますが、処分内容が少し複雑なので、解説を加えていきます。

戒告

弁護士への懲戒の中で、最も軽いものが口頭で行う注意、つまり戒告です。

弁護士業務や資格に対して全く影響のない懲戒処分であり、弁護士の反省を促すためだけに行われます。
もちろん戒告に従わないなら、懲戒内容はもっと重くなっていきますが、通常は戒告で終わります。

業務停止

業務停止の処分が下った場合、当該弁護士は弁護士としての業務を最大2年間行うことができなくなります。
1ヶ月から2年間の業務停止期間中に問題がなければ、業務停止期間後には弁護士として再び働くことができるようになります。

但し、弁護士として一定期間働けないという事実は経済的にも、弁護士としての経験の上でもかなり大きな痛手となります。
それ以上に、業務停止は周囲に知られることになるため、社会的な影響という意味では戒告とは比較になりません。

退会命令

弁護士法によって、弁護士会に所属している弁護士のみが業務を行えると定められています。
退会命令とは、弁護士会から退会させられることを意味しており、弁護士としての活動ができなくなる懲戒処分です。

他の弁護士会に所属できるようになるまで、弁護士として一切の活動ができないので、非常に重い処分と言えます。
ただし、弁護士としての資格には影響がないため、一定期間が過ぎ他の弁護士会が受け入れてくれれば活動を再開できます。

除名

除名処分とは、弁護士としての資格を3年間剥奪するという意味になります。
失った弁護士としての資格は3年後に元に戻るので、もう一度弁護士会に所属することで、理論上は業務を行えるようになります。

しかし、日本の弁護士会で除名になった弁護士を迎え入れるところはないため、事実上弁護士として復帰するのは難しいでしょう。
弁護士にとって信頼と信用は絶対条件になるため、除名処分を受けた弁護士を迎え入れたいという弁護士会がないのも理解できます。

資格が剥奪される理由

懲戒請求を弁護士会に対して行うのは、基本的に一般の方です。
一言で言えば、弁護士の業務内容や弁護士本人へのクレームが、懲戒請求として弁護士会に届きます。

こうした懲戒請求の97%は、訴えの内容に明確な根拠や証拠がないため、懲戒処分には至りません。
3%の懲戒処分の中で、資格が剥奪される除名処分の割合は、さらに少なくなります。
ではどんな理由で資格が剥奪されるのでしょうか?

  • 重い刑法犯
  • 弁護士ではない者との提携

除名という処分が下されるのは、主に上記の2つの理由になります。

法を守る弁護士自身が、資格を有していない者と業務を共に行うことは由々しき事態と言えます。

さらに一般の方でも刑法に違反するような行為をすれば罰せられますが、弁護士が刑法を破るなら当然弁護士への信頼に影響するため、非常に重い除名処分が下ります。
では一度、懲戒処分を受けてしまった弁護士は、再就職はできないのでしょうか?

再就職はできるのか?

弁護士資格を失っておらず、さらに弁護士会に所属していることが、弁護士としての活動をするための条件です。
ですから、この条件を満たしていれば再就職の可能性はあるという事です。
ただし、あくまで可能性という意味になります。

退会処分止以上の懲戒が下されることは、弁護士会から退けられたことを意味しており、もう一度弁護士会に登録するのは簡単ではありません。
特に除名処分を受けた場合、法的には復帰の可能性はあるものの、事実上の法曹界からの追放処分と言えるので再就職はほぼ不可能です。

このように弁護士であっても、刑法に違反するようなことがあれば、資格停止を伴う除名処分が下される事もあります。
特に、弁護士自身が刑法に違反するような行動を取れば、除名処分が下される可能性も十分にあります。

これは弁護士としての資格をはく奪することを意味するので、最低3年間は弁護士としての活動はできず経済的にも大きな打撃となります。
弁護士は法律の専門家として、一般市民の模範となる存在でなければならないという事です。

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