海外出張旅費規程の作成方法と日当・宿泊費の相場【ひな型テンプレート付】

海外出張旅費規程をきちんと作成することは、日当や支度料の支給により非課税の個人的な手取り収入が増えることに加えて、経営的にも非常に効果的な節税方法になります。

単純に節税になるだけでなく、税務に関して会社の信頼性を上げることにもつながるので、会社経営をしているのであれば必須の規定と言えます。
この記事では、海外出張旅費規程に関する以下の内容を解説しています。

  1. 海外出張旅費規程とは?
  2. なぜ節税になるのか?
  3. 日当のベストな精算方法とは?
  4. 海外出張旅費規程の作り方と見本テンプレート

節税のために必須である海外出張旅費規程について上記の点を解説していきます。

海外出張旅費規程とは?

海外出張旅費規程とは、その出張に関係する以下の内容をひとまとめにする書類のことを指します。

  • 宿泊費
  • 交通費(航空運賃・鉄道・タクシー・バス・レンタカー代、等)
  • 支度金(支度料)
  • 日当

出張に伴う上記の出費額を会社として規定しているのが、海外出張旅費規程です。

なぜ節税になるのか?

なぜ節税になるのか

仕事のために出張するなら、当然出張に伴う費用は全て損金として経費に計上することが可能です。
それでは何故、わざわざ海外出張旅費規程を作る必要があるのでしょうか?

先ほど解説した海外出張旅費規程に含まれる項目の中で、宿泊費と交通費は旅費規定を作らなくても経費として計上できるものです。

しかし支度金(支度料)と日当の2点を経費としては計上しようとするためには、「海外出張旅費規定を定めて、保管しなくていけない」という税務上の決まりになっています。

支度金(支度料)とは?

海外への出張となると準備しなければならない物がたくさん出てきます。

  1. アイマスクや耳栓、スリッパを始めとする、機内を快適に過ごすためのトラベル・アメニティー・グッズ
  2. 海外対応のコンセントプラグや変圧器、高速充電器、モバイルルーター等の電子機器類
  3. 出張先の気候に合わせた服装や防犯グッズ、バッグ類
  4. 翻訳機やガイドブック
  5. 常備薬や小物を携帯するためのポーチ、パスポートケース等の身の回り品

これらは海外出張が決まってから購入しなければならないものですが、個別に経費計上していると膨大な数になってしまいます。

そのため、海外出張旅費規程の中で「支度金」として一括して支払うことで、細かい情報を計上する必要がなくなります。

支度料の支給は一年に一度とし、頻度に合わせて毎年の支給額も減額する必要があります。
頻繁に出張する方は、前回購入した物を次回にも使用出来る場合もあるからです。
※支度料の相場と社会通念上一般的と思われる目安は、代表者の場合で7~10万円くらいとなっているようです。
ちなみに私の会社では、役職にかかわらず一律7万円で設定しています。

日当とは?

海外出張をすると、肉体的・感情的・精神的にも大きなストレスになるものです。さらに食費に加えて、現地でも多くの出費が予想されますす。

この保障として通常の給料に加えて、出張では【日当】というものを支給して良いことになっています。

海外出張旅費規程を作ることで、日当に関しても経費として計上することができるようになります。

ホテルの宿泊費

ホテルの宿泊費に関しても、事前に海外出張旅費規程によって金額を定めておくと、実際の宿泊費との差額まで経費として計上することが可能です。つまり宿泊費の定額支給が可能になります。

例えば、規定では1泊20,000円であるものの、実際の宿泊費が15,000円の場合、差額の5,000円は非課税で手元に残ることになります。この部分には社会保険も税金もかかりません。

宿泊費の精算方法は、実際にかかった費用を精算する「実費精算」と、実際にいくらかかったかは関係なく、一定額を支給する「定額精算」があります。

出張先の物価にもよりますが、一般的には定額精算の方がお得になる場合が多いようです。この場合は定額精算の基準をやや高めに設定しておかないと、出張の度に個人にマイナスが生じるのはモチベーションの低下にも繋がりますので、十分に相場を検討する必要があります。

かといってあまりにも支給額が高すぎると会社の負担にもなりますし、また税務調査の時に疑われる可能性も出てきますので、あくまでも相場と比べてやや高め程度に設定することが望ましいと言えます。

ちゃんと手当の保証があるからこそ、負担のかかる出張にも意欲をもって取り組めるのではないかと思います。
ちなみに総理大臣や大臣、他国家公務員は定額精算になっています。

海外出張旅費規程を作ることで、海外出張に関する費用を簡単に経費計上し、全額損金として処理できるようになります。

定額精算のルール

宿泊費を定額支給にする場合には、以下のルールを守って下さい。

  1. ホテルは個人で予約して、支払いも個人でする(一時的に立て替える)。
    会社で支払うと実費精算になってしまいますので、ご注意下さい。
  2. 領収書、申し込みの控え等の、宿泊証明が出来る書類を保管する。(領収書がなければ、予約時の確認メール等でも大丈夫です)
  3. 帰社後は、出張報告書を作成して、提出・保管する。

日当の計算方法とは?

日当の計算方法について解説します。

日当の支払は、国内乗り換えがあったとしても、出張当日から帰国日までを含める必要があります。
日当は以下の条件によって変化させる必要があるでしょう。

  • 社員の役職
  • 出張先の国や地域

役職による日当の違いと相場

役職が異なる場合、当然給料が異なっているため、支給する日当に関しても差が生じます。
金額については、各会社で決める必要がありますが、参考となる相場の金額を紹介します。

金額を低くして税務調査で何かを言われることはありませんが、高すぎると「その金額が何故適切なのか」を説明する必要が出てきますので、あまり欲張りすぎず、これも社会通念上から考えて常識的な範囲内に設定することをオススメします。

  • 代表取締役:8,000円~20,000円
  • 役員:6,000円~15,000円
  • 管理職(部長や課長):5,000円~12,000円
  • 一般社員:3,000円~9,000円

上記の金額の上限は、「これくらいまでなら、税務調査があっても何も言われないであろう」と思われる、社会通念上まともな金額設定になります。

ちなみに私は代表者として、10000円の日当にしています。(なんだかんだ言っても、平均かやや少ない方が感じよくは見えますね(笑))

さらにあまり支給額が多すぎると、個人的にはありがたいのですが、会社の負担分を重くすることになってしまいます。

利益がたっぷりと出ている会社で、損金を増やしたい場合は別ですが、大抵の会社では経費も抑える必要性があると思いますので、やはり相場の平均前後に落ち着くのではないでしょうか?

国や地域による日当の違い

同じ海外出張であっても、移動する距離が違えば、体力的にも精神的にも疲労は変化するものです。

ですからアジア地域への出張に比べて、ヨーロッパやアメリカへの出張の方がストレスや肉体的負担も大きいため、日当も高めに設定することができます。さらに物価の違いも考慮する必要があります。

ただし、これはあくまで参考なので、企業によって数字や、地域の分け方に相違が出てくることでしょう。
会社の規模、出張先(近いアジアなのか、遠いヨーロッパなのか)によって、適切な日当額を規定しておきましょう。

交通費

海外出張となると、基本的に航空機を利用することになります。
国内便と比べて海外への航空機代は高額になり、地域によって航空機費用が大きく異なるため【実費精算】にするのが無難です。

というよりも必ず実費精算にし、会社で航空券を購入するようにしましょう。
実費ではなく規定した金額を記載すると、税務調査の場合に疑われてしまう可能性が出てきますの、ご注意下さい。

国内便の正規運賃と割引運賃はそれほど価格に違いがありません。さらに急な出張の場合には、ほぼ正規運賃で購入することになりますので、定額支給で良いとお考えください。
これに対し、海外便の場合は、正規運賃と割引運賃の差が大きすぎます。
これを正規運賃の定額支給にしてしまうと、会社の負担が大きすぎますし、出張者だけが臨時収入が増え過ぎる結果となり、不公平が生じます。
また、実際には出張しないカラ出張も疑われますので、ちゃんと会社で処理することにより、正規な出張であることを認識付ける必要があります。

海外出張旅費規程の作り方

海外出張旅費規程に記載すべき内容は以下のようなものです。

  1. 海外出張旅費規程の目的
  2. 交通費
  3. 宿泊費
  4. 日当
  5. 支度金
  6. 国や地域の区分説明
  7. 出張の経路が合理的である旨
  8. 日当の計算方法
  9. 支度金の計算方法
  10. 万が一事故が起きた時の日当や宿泊費の調整方法
  11. 役職と地域区分に合わせた交通費
  12. 役職と地域区分に合わせた日当
  13. 役職と地域区分に合わせた宿泊費

最低でも海外出張旅費規程には、上記のような内容を記載すべきでしょう。海外出張旅費規程が準備されていれば、十分な節税対策となります。

しかし海外出張旅費規程に加えて、実際に出張した社員や役員が仕事のために移動をしたことを証明するため、スケジュール表や出張報告書などはしっかり残しておきましょう。

さらにホテルの宿泊費などは、一旦個人で支払ってもらい、領収書を保管することも重要です。(定額精算の場合)

海外出張旅費規程をきちんと作成しておくことで、毎回の出張に関する経費の管理作業を簡略化できます。
それだけでなく海外出張旅費規程は、節税対策としてもかなり効果的であると言えます。

海外出張旅費規程のひな型(見本テンプレート)

下記に海外出張旅費規程の見本(テンプレート)を金額の相場を入れた形で載せますので、ご自分の会社の規模等に合わせて書き換えてご使用下さい。

最低でもこれくらいの項目は必要かと思います。国家公務員等のお役所レベルになると、相当細かく規定されていますが、普通の会社でしたら大企業でないかぎり、これくらいで良いのではないかと思います。

念のために担当の税理士さんに確認してもらうとより安心です。

以下、海外出張旅費規程の見本ですので、参考にして下さい。


海外出張旅費規程

(目的)

第1条 この規程は、●●▲▲会社の役員および社員が社命により海外出張するときの旅費について定める。

(適用範囲)

第2条 本規程は、原則として役員および社員に適用する。但し役員および社員以外の者であっても代表者の承認を得ている場合は、本規定を準用することができる。

(旅費)

第3条 この規程によって支給される旅費とは、次のものをいう。

★交通費
★宿泊費
★日当
★支度料

(海外の区分)

第4条 この規程における海外とは、次の3地域に区分する。※ S地域は指定都市。

区分 国名(地域)
S地域 ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ロンドン、パリ、ジュネーヴ
A地域 S地域、B地域以外の地域
B地域 中国、韓国、台湾、香港、東南アジア

(出張の経路)

第5条 出張の経路は、予約上可能な限り、合理的かつ経済的な経路を選択することとする。但し、業務の都合、天災など特別な事由がある場合はこの限りではない。

(支度料)

第6条 出張により下記の支度料を支給する。但し、支度料は1年間に一度とし、次の支度料の支給は、前回支給から1年以上経過した場合のみとする。また前回支給からの年数により、減額して支給することとする。なお一年間の定義は、支給を受けた旅行の出発日から翌年の同日の前日までを1年として計算する。

初、又は前回支給より5年以上経過 7万円
過去1年以内に支給を受けた場合 なし
過去1年以上3年以内に支給を受けた場合 3万円
過去3年以上5年以内に支給を受けた場合 5万円

(出張中の病気および事故)

第7条 傷病、交通途絶その他の事由により、所定日数以上滞在する場合には、事情審査の上旅費を支給する。

(交通費・宿泊費および日当)

第8条

1 交通費は、下記表で定める区分により、実費支給する。

区分 交通費(飛行機) 交通費(飛行機以外)
代表取締役 ビジネスクラス運賃の実費(※) 実費
役員 ビジネスクラス運賃の実費(※) 実費
社員 エコノミークラス運賃の実費 実費

※予約の都合上、エコノミークラスの搭乗となった場合には、エコノミークラス運賃の実費。

2 宿泊費および日当は、出張先の区分に従って下記表に定める額を支給する。なお、支給日数は出発の日から帰着日までの間、日本における暦日数に応じて計算する。(機中泊・船中泊は日当のみで宿泊費の支給はなし)

区分 S地域 A地域 B地域
宿泊費 日当 宿泊費 日当 宿泊費 日当
代表取締役 28,000円 12,000円 23,000円 10,000円 19,000円 8,000円
役員 25,000円 11,000円 21,000円 9,000円 17,000円 7,000円
社員 21,000円 9,000円 18,000円 7,000円 15,000円 5,000円

(同伴者に伴う旅費)

第9条 上位職位者または取引先と同行して出張する場合は、上位職位者または取引先と同等の取扱いをすることができる。

(時間外勤務)

第10条 出張者については時間外勤務の取り扱いは行わない。

(報告書の作成)

第11条 出張者は、海外出張報告書、及び海外出張旅費精算書を作成し、これを提出しなければならない。

(出張期間中における休日の取扱)

第12条 出張期間中に休日がある場合は下記表のとおり扱う。

業務活動の有無 支給の有無
業務活動を行なった場合 日当、宿泊費等、通常のとおり支給する
業務活動を行なわなかった場合 宿泊費のみを支給し、日当は支給しない
出発日・移動日・帰着日が休日の場合 日当、宿泊費等、通常のとおり支給する

附 則

この規程は、令和1年4月1日より適用する。

海外出張旅費規程の見直しをした場合

「この規程の一部を改訂し、令和2年1月15日より適用する。」
↑ この一文を附則に付け加える。

付け加えた場合は、以前の適用日時を消すのではなく、新しい日時を追加していくことになります。
以下、附則の見本です。

附 則

この規程は、令和1年4月1日より適用する。

この規程の一部を改訂し、令和2年1月15日より適用する。


▲内容や金額の見直しは、随時しても問題はありませんが、その際株主総会での承認が必要となりますので、議事録の作成と保管をしてください。

合同会社の場合は、株主総会が存在しないため、【同意書】を作成して保管することになります。

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