会社を設立した時に、「役員報酬をどのように決めれば良いのか」「金額はいくらにした方がいいのか」など、頭を悩ませる方も少なくありません。「そもそも相場はいくら位が適当なのか」と、かつての私もそうでした。
役員報酬は、支払う税金の額に関係してくる上に、会社の経営においても、資金面に直接影響してきます。
この記事では私の経験も含めて、役員報酬に関して以下のような内容を解説しています。
- 役員報酬の決め方やルール
- 役員報酬を決める際の注意点
- 税金への影響はどうなる?
このページでは役員報酬を決める際に理解しておくべき上記の内容について、詳しく説明していきます。
役員報酬の決め方やルール
役員報酬を決める際には、4つのルールを意識するようにしましょう。
- 会社設立から3ヶ月以内に役員報酬を決める
- 報酬は定期同額
- 役員報酬を設定した後に変更できる機会は1度だけ
- 2年目以降の役員報酬の増額と減額
- 役員報酬は株主総会で決める
役員報酬を決める時には、上記の4つのルールを守る事が必要です。
会社設立から3ヶ月以内に役員報酬金額を決める
役員報酬額は、「会社を設立してから3ヶ月以内に決定しなければならない」というルールがあります。
まだ売上などの結果が出ていない中で、役員報酬を決めるのは難しいかもしれませんが、時間的にリミットがある事は覚えておきましょう。
会社設立初年度は先が見えないため、売上の推移が予測しずらい場合も多いと思います。
サラリーマンからの独立の場合は、最初の3ヵ月の売上をもとに、若干上乗せしたかたちで、とりあえずの予測をするほかありません。
次年度からいくらでも修正できますので、とりあえず初年度は無難なところで決めてみましょう。
役員報酬は定期同額で支払う
税法上、役員報酬には3つの種類があります。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
この3種類の中で、もっとも基本的な役員報酬といえば、定期同額給与となります。
業績連動給与は大企業などで使われている役員報酬であり、同族会社には適用できないため、中小企業では採用されないことがほとんどです。
役員報酬を設定した後に変更できる機会は1度だけ
役員報酬は、1度決定したのであれば、基本変更はできないものです。もし変更するとその分に税金がかかりますので、注意が必要です。
ただし会社設立から3ヶ月以内であれば、1度だけ変更ができると規定されています。
よって役員報酬額は、よく検討してから決めるようにしましょう。
2年目以降の役員報酬の増額と減額
ちなみに2年目以降の場合は、会社の決算が終了してから新年度に入って3ヶ月以内ならば役員報酬の増額と減額による変更が可能になります。
よって昨年度の決算の結果を踏まえて、今年度の予測も加味した上で、「果たして役員報酬をあげても大丈夫なのか?または減らした方がいいのか」を考えてください。
役員報酬は株主総会で決める
役員報酬は一部の人間が決めるものではなく、株主総会の決議によって決定されます。
株主総会で決めるのは役員報酬の総額であり、個人個人の役員報酬額については取締役会で決定されます。
こうした手順についても覚えておきましょう。
役員報酬を決める際の注意点
役員報酬を決定する時のルールを覚えておくことに加え、注意点も2つほどあるので記憶に留めておいてください。
- 役員報酬と経費の関係性
- 会社の経営状態を予想して報酬額を決める
- 役員報酬の相場は
役員報酬と経費の関係性
役員報酬も会社の必要経費に含めることができますが、やはりルールが存在しています。
会社の経費に含められる役員報酬は、先程紹介した3種類のものだけです。
★定期同額給与
★事前確定届出給与
★業績連動給与
この役員報酬以外については、会社の経費として計上することはできません。
例えば思ったよりも売上が良かったため、下半期の役員報酬を増やそうとしても、増加分は経費には含められません。
さらに事前確定届出給与である場合、税務署に報告している額と異なる役員報酬を支給してしまうと、役員報酬全額が経費に計上できなくなります。
会社の経営状態を予想して報酬額を決める
会社を設立したばかりだと、利益がどれくらいになるのか計算するのは難しいものです。
しかし役員報酬額が高すぎると、業績によっては役員報酬を支払えなくなってしまいます。
逆に役員報酬が少なすぎると納める税金額が大きくなり、会社の利益を減らしてしまうことになるでしょう。
ですから会社の経営状態をしっかりと見極めてから、役員報酬を決定しなければなりません。
売上目標から光熱費や水道代、従業員の給料や家賃、仕入、必要経費などを差し引いた金額を基準に考えていきます。
役員報酬の相場は
役員報酬を決める際に、他の会社の経営者たちはどれぐらい役員報酬をもらっているのか、というのが気になります。いわゆる役員報酬の相場です。
しかしながら相場はあってないようなものです。なぜならば役員報酬をどれだけもらえるかは売上のボリュームによるからです。
例えば億単位の売上が見込めるならば、さらに利益率が高い業種ならば、年収を3000万や4000万に設定することも可能でしょう。しかし売上が年間で1000万位しか見込めないとしたら、300万円くらいの役員報酬しか取れないかもしれません。
要するに年間売上の予測から必要経費を全て引いた残りを、そのまま役員報酬の額として設定するような計算をすれば良いかと思います。
結論押して、「役員報酬の相場はそれぞれの会社次第である」と言えます。
私の場合は会社を設立する前に同じ事業をやっておりましたので、月間売上高と必要経費の予測はほぼ付いておりましたので、比較的簡単に決定することができました。しかしそれでも念のために、やや低めに設定したのです
では次に具体的に役員報酬と税金の話をしていきましょう。
税金への影響はどうなる?
役員報酬に関係してくる税金は、会社として支払う法人税と個人として支払う所得税です。
まず役員報酬が多くなると、会社全体として経費計上できる金額が高くなるため、法人税の支払額は少なくなります。
しかし個人としては、収入が増えるという事になるため、所得税の納税額や社会保険料は高くなってしまうでしょう。
ですから、役員報酬は高すぎても所得税額が増えるため良くありませんし、低すぎるのも法人税を多く払うだけになってしまいます。
いずれにしても利益が出る限り、納税は必要になります。あとは「バランスで個人と法人とどちらで税金を多く収めるか」という問題になってきます。
中小零細企業の場合の役員報酬の決め方
会社に多くお金を残すことを勧めるサイトも多数あります。その理由は、小さい会社の場合は法人税が低く設定されており、個人の源泉所得税よりも税率が低いからです。
また設立当初は、会社の体力も強化しておく必要があるからです。
これも一つの考え方と言えます。
しかし私は個人に多く資金を移動させるのもアリと思っています。
代表者にお金があれば、会社がピンチの時にも資金調達が容易でありますし、自分の貯金がある程度あればどこかに安心感が生まれ、心もポジティブになることで仕事にも良い影響があるからです。
私の税理士さんのホームページにも、「最初は「売上ー必要経費(役員報酬含む)=0」になるように計算にすると良いでしょう」と書いてありました。これも一つの分かりやすい、初年度の役員報酬の決め方だと思います。
いずれにしましても、会社設立後の数年間は、試行錯誤の連続です。全て最初からパーフェクトにいくものではありません。
毎年修正しながら、最も良いバランスが見つかるものです。